今後増加が予想される「任意の日に継続保有の確認をする」という優待クロスをする上での懸念事項について考察します。従来のシンプルなクロス取引では、株主優待をもらいにくくなる時代がやって来るかもしれません。
今のところの対策は、空クロスを使うやり方です。

サイゼリヤの悲報
おそらく今年の優待クロス界隈の一番の悲報は、サイゼリヤ株主優待改悪の内容になるでしょう。
※100株以上を継続保有(19年は8月末および4月末から8月末までの任意の時点、20年は8月末および19年8月末から20年8月末までの任意の時点で確認)した株主のみに贈呈
任意の時点を基準日にする、という前代未聞の露骨なクロス古事記対策長期認定の条件には驚きました。
何が悲報かを説明します。サイゼリヤだけならば、個別に対応すれば良いだけの話です。しかし、このような前例が成り立ってしまったことで、真似をする企業が間違いなく増えるであろう点が、今後の大きな不安になってしまいました。
ちなみに、4月末から8月末までの任意の時点を愚直にカバーしたとして、いくらコストがかかったのかをご紹介しましょう。
受渡日で2019/5/1~2019/8/31は 124日です。
当時の株価2450円で1000株、245万円の一般売り建玉に対する貸株料(1.4%)は、124日で11652円と計算できました。
2019年の場合は、2万円のお食事券を12000円弱を支払ってゲットできたことになりますので、4か月も資金が拘束される余裕のある人ならば、十分価値のあるチャレンジだったといえます。
任意の基準日への対策
さて、ここからが今後の対策です。様々な企業が地獄の「任意の基準日」を採用した場合、どんな優待クロスの方法で迎え撃つか?
基準日は「いくら任意の日といっても、さすがに月末だろう」と予想できます。また、文言からすれば1回のように見えますが、複数回あるかもしれません。リスクを極力排除するやり方を考えてみます。
端株が権利になる場合
これは従来の端株優待、端株による権利認定と同じ仕組みでシンプルです。鬼ホールドあるのみ。封筒の郵便爆弾だけに耐えればOKです。
しかしながら、わざわざ面倒な任意の基準日を採用するほどですから、さすがに端株で通るような甘い話は無いと予想できます。
空クロス100株が権利になる場合
12か月ずっとクロス
もはや「永遠にクロス」に近い状態です。
最もお得な貸株料でも1.4%ですから、優待利回りが1.4%ある銘柄以外ほぼやる意味がありません。現実的には優待利回りは2%欲しいところですから、かなり銘柄が絞られてしまいます。結局、後述する「複数単元の優待が途中100株でも通る」場合にのみ、メリットがあるやり方です。
メリット
- 手間はかからない。
デメリット
- 貸株料が高過ぎる。
毎月空クロスする
何月末に継続保有の判定があってもよいように、毎月月末に株を保有した状態を空クロスで作ります。
メリット
- 貸株料が月末分だけで良いので、コストが1年間クロスする約10分の1で済む。
デメリット
- 空クロスを1回でも忘れると、継続保有認定されない可能性がある。判定月はいつかは分からない。
- 毎月在庫が取れるとは限らない。在庫がゼロの場合は制度で空クロスして逆日歩のリスクを負うことになる。
- 普通に面倒。システムで自動化でもしないと現実的には大変。
複数単元の優待を狙う
12か月ずっと空クロスにしろ、毎月空クロスにしろ、株主優待の権利月に大きな価値のある優待がもらえるのなら、コストと手間をかけた必死の空クロスをする価値が残ります。
たとえば、任意の基準日で継続保有の確認があるものの、1000株ならば100株の10倍の額面のお食事券がもらえる銘柄を想定しましょう。
もし、継続保有の確認が「100株で十分」であるならば、株主優待の権利月以外は100株を空クロスし、株主優待の権利月だけ1000株をクロスすれば、100株の場合よりリターンが増えることになります。
しかし、継続保有の確認で権利に加えて株数も確認する場合だと、株主優待の権利月に1000株を保有していても、途中一回でも100株に減った記録があると、1000株分の優待がもらえないパターンも予想できます。これは端株優待を狙うケースと同じで、残念ながら実際にやってみないと分からない性質のものです。
まとめ
まだ「任意の日に継続保有の確認をする」ような企業はサイゼリヤ以外無いようですから、このような話は心配し過ぎかもしれません。
しかし、優待クロス界隈に厳しい時代がやってくる前に、コスト計算、手順の整理、事務作業の効率化など、計画と対策には時間がかかるはずで、できるだけのことを前もって準備しておきたいですね。
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コメント
真似をする人が増えるほどみなサイゼリヤになるでしょう。
私が企業側の人間ならすぐそうする
手間暇かけて自分の首を絞める意味が分からない。
かすみちゃん様
とる造です。コメントありがとうございました。
仰る通りです。
実はわたしは、この先もずっとクロス取引ができるとは思っておりません。
期間限定のキャンペーンではないですが、
もしかすると「今から数年しかできないのではないか?」と思い
むしろ今のうちに情報発信しているほどです。
道中、仰るように手間暇の量が増えれば、辞める人も増えるでしょう。
その分は競争が減るわけですが・・
相場だけでなく、ビジネスであっても
「同じ人が同じことをし続ける」だけで
誤解を恐れず申し上げますと「楽をして」利益を得る続けるなんてことは
ありえないと考えています。
(既得権益という言葉もありますけども・・)
また、現代の個人投資家は、大変したたか(賢い)です。
株だけに詳しいわけではなく、
幅広い儲け話に詳しく、情報がとても早い、そして行動力があります。
企業にまで届く情報源・存在感として、
わたくしども程度の情報発信は、所詮「後手」側に過ぎません。
クロス取引自体は、もう10年以上前から個人投資家で行われていて
今ほどではないものの有名でしたし、情報もインターネットにございました。
むしろ、ここ数年で突如、推奨し始めたのは「証券会社」です。
初めて「クロス取引のキャンペーン」なんてものを見たとき、
わたしはビックリしました。
それだけ証券会社も「安定収益の種になる」と気付いたのでしょう。
言い訳のようなことを並べ立てて申し訳ありません。
わたしだって、競争激化の副作用は良くないと感じますし
今のまま知っている人間だけが得をできたらなぁ~という感情もございます。
しかし、そんな競争を止める力は微塵もございません・・
(たとえ自分が○融庁の幹部だったとしても、難しいと思います)
もっとも、安いコストで優待がもらえること自体が「妙な話」であって
厳しい条件がついて、苦労して手に入れる方が正しいのかもしれません。
本来は、今回のようなとんでもない値動きを含め
長期間リスクに耐え続けた報酬として手に入れるものです。
わたしはクロス取引は投資よりも労働や商売と捉えていますし、
工夫をこらし戦略を立てることや、改善し続けるような苦労がないのは
逆に、おかしかったのでは?とも思うのです。
とはいえ、かすみちゃん様のコメントを拝見し、
この社会全体の問題も連想しました。
わたしは株式市場、資本主義社会の行き過ぎた競争に、
やれやれ・・と辟易もしております。
個人的には共感できる感情もございます。難しい問題です。
ご不安な感想をわざわざコメントにしてくださいまして、
ありがとうございました。心に留めておきます。
とる造