とる造
こちらは優待クロス関連でも、少しマニアックな記事です。コラム感覚でお読みいただければ幸いです。
一般信用売りの在庫がレアな銘柄(ソシャゲでいえばSSRくらい?)を、複数単元で増額となる株主優待を狙ってクロス取引した場合、どれほどのコストがかかり、どれだけのリターンがあるのか、要は、どのくらい儲かるの?やる意味はあるの?をレポートいたします。
こんな必死なこと、ほとんどの人がしないと思うよ。
とり子
まず、在庫がレアですから、当然、権利付き最終日よりずっとずっと前からクロスしなければなりません。一体どのくらい前なら在庫が確保できたのか?も参考になると思います。
また、因果関係は「卵と鶏」ですが、在庫がレアな制度信用銘柄だと、逆日歩が発生しがちです。実際に、いくら逆日歩が発生したのか?単純に、権利落ち日に制度信用売りでクロスした場合と比べて得だったの?損だったの?こちらも大事な考察ポイントです。
選んだ銘柄
8月優待から、比較的在庫がきつめで、複数単元での金額アップのある2銘柄を選びました。
- クリエイト・レストランツ(3387)
割の良い1,500株を狙いました。
3,000円相当 100株以上 6,000円相当 500株以上 15,000円相当 1,500株以上 30,000円相当 4,500株以上 - リンガーハット(8200)
ほぼ比例、むしろ、すかいらーくと同じタイプの「株数多い方がお得」なので、上限まで行きました。
2枚 100株以上 7枚 300株以上 12枚 500株以上 25枚 1,000株以上 50枚 2,000株以上
いつ在庫が取れたの?
こちらが約定履歴です。
クリエイト・レストランツは、63日間のクロスが必要な6/27に、リンガーハットは、61日間のクロスが必要な7/1に、一瞬でも在庫がゼロになったためクロスを決行しました。もしかすると、これよりも後に在庫の回復があったかもしれませんが、未確認です。確保することを優先しました。
コストとリターンの現実
ここで挙げるコストとリターンは、約定の時点で確定するため、事前に予め計算ができます。
SBI証券の一般信用(15日)で、最も早くノーマルのクロスをするタイミングは8/8でしたので、これとの比較がコストの参考になると思います。実際に、SBI証券のノーマルクロス初日は19時過ぎほどなく在庫切れになったものの、10~15単元以上注文が通る在庫があったことを確認しています。
また、最低単元100株を同日にクロスしたケースも計算しましたので、参考にしてみてください。
※今回、2つの銘柄とも期間中に決算があり、株価が大きく上昇してしまいました。株価は直近の数字で計算しています。わたしが日興証券で約定した価格とは違いがあり、実際のコストは以下の計算より安く済んでいます。口座の資金も株価の上昇分たくさん必要ですし、いかに株価が上がると優待クロスは不利であることも思い知りました。
とる造
こんな事を言うとあれじゃが、優待クロスに資金が少なく済んでいたアベノミクス以前は、今思うと本当に天国じゃったよ。利回りが軽く今の倍はあった。
クリエイト・レストランツ(3387)
想定株価:1,600円
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100株で金券3,000円分
ヤフオク落札価格:約78% ヤフオクで調査
換金価値:3,000円×78%×92%=約2,150円
必要資金:約16万円
SBI証券の一般信用で8月8日にクロス取引すると?
手数料:290円 金利:16万×2.8%÷365=12円
貸株料:16万×3.9%÷365×21日間=359円
コスト:661円 リターン:約1,490円
優待利回り:0.93% 粗利率:69.29%
日興証券の一般信用で6月27日にクロス取引すると?
手数料:0円 金利:13.5万×2.5%÷365=9円
貸株料:13.5万×1.4%÷365×63日間=326円
コスト:335円 リターン:約1,820円
優待利回り:1.34%と高め 粗利率:84.43%
1,500株で金券15,000円分
ヤフオク落札価格:約78% ヤフオクで調査
換金価値:15,000円×78%×92%=約10,760円
必要資金:約240万円
SBI証券の一般信用で8月8日にクロス取引すると?
手数料:756円 金利:240万×2.8%÷365=184円
貸株料:240万×3.9%÷365×21日間=5,385円
コスト:6,325円 リターン:約4,440円
優待利回り:0.18%と低め 粗利率:41.23%
日興証券の一般信用で6月27日にクロス取引すると?
手数料:0円 金利:202.5万×2.5%÷365=138円
貸株料:202.5万×1.4%÷365×63日間=4,893円
コスト:5,031円 リターン:約5,730円
優待利回り:0.28%と低め 粗利率:53.26%
リンガーハット(8200)
想定株価:2,600円 継続保有:内容追加あり
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300株で食事券3,780円分
ヤフオク落札価格:約91% ヤフオクで調査
換金価値:3,780円×91%×92%=約3,160円
必要資金:約78万円
SBI証券の一般信用で8月8日にクロス取引すると?
手数料:756円 金利:78万×2.8%÷365=59円
貸株料:78万×3.9%÷365×21日間=1,750円
コスト:2,565円 リターン:約600円
優待利回り:0.07%と低め 粗利率:18.94%
日興証券の一般信用で7月1日にクロス取引すると?
手数料:0円 金利:67.5万×2.5%÷365=46円
貸株料:67.5万×1.4%÷365×61日間=1,579円
コスト:1,625円 リターン:約1,540円
優待利回り:0.22%と低め 粗利率:48.65%
2,000株で食事券27,000円分
ヤフオク落札価格:約91% ヤフオクで調査
換金価値:27,000円×91%×92%=約22,600円
必要資金:約520万円
SBI証券の一般信用で8月8日にクロス取引すると?
手数料:756円 金利:520万×2.8%÷365=398円
貸株料:520万×3.9%÷365×21日間=11,667円
コスト:12,821円 リターン:約9,780円
優待利回り:0.18%と低め 粗利率:43.28%
日興証券の一般信用で7月1日にクロス取引すると?
手数料:0円 金利:450万×2.5%÷365=308円
貸株料:450万×1.4%÷365×61日間=10,528円
コスト:10,836円 リターン:約11,770円
優待利回り:0.26%と低め 粗利率:52.06%
解説:利回りは厳しく粗利は半分
結論として、利回りは低く資金効率は悪いと言い切れるでしょう。粗利も、半分が貸株料を占める水準ですから、自他ともに認めるクロスコジキのわたしでもギリギリセーフのラインです。
わたしは優待クロスの利回りは0.5%が標準と考えていて、これを下回ると資金効率の悪い優待クロス、1%なんて超えてくると資金効率の優秀な優待クロスと判断しています。
配当投資や株主優待投資とは違って、完全にリスクを排除しているわけですから、その恩恵を鑑みると、このくらい保守的な見立てが妥当だと経験的に感じています。
儲かるのか?といえば、儲けは出ていますので、儲かることは分かりました。
しかし、これだけの資金を何ヶ月も拘束されて、このリターンですから
こんな非効率なこと、やってられんわ!!
とり子
という人がたくさん居ることでしょう。
結論:あなたの投資スタンスがわかる
優待クロスに執着しまくった人がたどり着くのが、この記事のような「やり過ぎ」クロス取引だと思います。
おすすめできない人
- 利回り原理主義の人(投資の王道です)
- 資金を活かして他のことで稼げる人(機会損失は意識したい)
- とにかく手数料の類を払いたくない人
おすすめできる人
- リスクは死んでもとりたくない人(守りも大事です)
- ケチを褒め言葉と解釈できる人
- 不毛と分かっていてもポイントを貯める人
- 0.1%還元すら手を出す人
性格で投資スタイルを決めるきっかけに!
さて、優待クロス自体、ずっと昔から、いわゆる投資クラスタで賛否両論がありました。クロス取引は投資ではないし邪道だ!みたいな。実際にわたしも「優待クロスは労働」と認識してやっています。完全に「何かを仕入れて売る」仕事です。多少、趣味・ゲーム的な性質もあるかもしれませんね。
他のコラムでちゃんと書きたいと思っているのですが、投資は「私生活と性格」でスタイルを決めることをオススメします。資金やらキャッシュフローといった現実の制約が大前提にあり、その上で、ストレスなく継続できる自分の性格にあったやり方を選ぶことが大切ではないでしょうか。
そういう意味で、やり過ぎの優待クロスについてどう感じるか?は、あなたがリターンと効率を重視するタイプか、とにかくリスクを回避したいタイプか、試される命題になったのではないでしょうか?どちらを選んでも構わないと思います。
とる造
ワシもデイトレーダーだった頃は資金効率の鬼じゃったよ。今ではすっかりクロスコジキじゃがな!!
それにしても、優待クロスって、○モリさんの迷言「健康のためなら死ねる!!」みたいなものよね。本末転倒っぽいけど、変な熱意だけは感じるわ!
とり子
完全敗北!逆日歩とは何だったのか!
さて、優待クロス勢のお祭り会場はこちらです!
とり子
とる造
お祭りというより、お通夜会場になってしもうた・・
2019/08/28約定の品貸料率(逆日歩)
- クリエイト・レストランツ(3387)
逆日歩:1.05円/上限13.6円
100株で、わずか105円!
1500株で、たった1575円!! - リンガーハット(8200)
逆日歩:1.05円/上限13.6円
100株で、わずか105円!
2000株で、たった2100円!!
SBI証券、そして手数料無料の日興証券で、最短のお手軽コース!
- 権利付き最終日に駆け込みで
- 在庫無制限の制度信用でクロス取引していたら
一体いくらコストがかかり、いくらリターンがあったのかを計算してみましょう。
クリエイト・レストランツ(3387)
想定株価:1,650円
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100株で金券3,000円分
ヤフオク落札価格:約78% ヤフオクで調査
換金価値:3,000円×78%×92%=約2,150円
必要資金:約16.5万円
SBI証券の制度信用で8月28日にクロス取引すると?
手数料:290円 金利:16.5万×2.8%÷365=12円
貸株料:16.5万×1.15%÷365×3日間=15円
逆日歩:105円 コスト:317円 リターン:約1,740円
優待利回り:1.11%と高め 粗利率:85.27%
日興証券の制度信用で8月28日にクロス取引すると?
手数料:0円 金利:16.5万×2.5%÷365=11円
貸株料:16.5万×1.15%÷365×3日間=15円
逆日歩:105円 コスト:26円 リターン:約2,030円
優待利回り:1.28%と高め 粗利率:98.79%
1,500株で金券15,000円分
ヤフオク落札価格:約78% ヤフオクで調査
換金価値:15,000円×78%×92%=約10,760円
必要資金:約247.5万円
SBI証券の制度信用で8月28日にクロス取引すると?
手数料:756円 金利:247.5万×2.8%÷365=189円
貸株料:247.5万×1.15%÷365×3日間=233円
逆日歩:1,575円 コスト:1,178円 リターン:約8,010円
優待利回り:0.38%と低め 粗利率:89.05%
日興証券の制度信用で8月28日にクロス取引すると?
手数料:0円 金利:247.5万×2.5%÷365=169円
貸株料:247.5万×1.15%÷365×3日間=233円
逆日歩:1,575円 コスト:402円 リターン:約8,780円
優待利回り:0.41% 粗利率:96.26%
リンガーハット(8200)
想定株価:2,550円 継続保有:内容追加あり
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300株で食事券3,780円分
ヤフオク落札価格:約91% ヤフオクで調査
換金価値:3,780円×91%×92%=約3,160円
必要資金:約76.5万円
SBI証券の制度信用で8月28日にクロス取引すると?
手数料:756円 金利:76.5万×2.8%÷365=58円
貸株料:76.5万×1.15%÷365×3日間=72円
逆日歩:105円 コスト:886円 リターン:約2,180円
優待利回り:0.29%と低め 粗利率:72%
日興証券の制度信用で8月28日にクロス取引すると?
手数料:0円 金利:76.5万×2.5%÷365=52円
貸株料:76.5万×1.15%÷365×3日間=72円
逆日歩:105円 コスト:124円 リターン:約2,940円
優待利回り:0.39%と低め 粗利率:96.08%
2,000株で食事券27,000円分
ヤフオク落札価格:約91% ヤフオクで調査
換金価値:27,000円×91%×92%=約22,600円
必要資金:約510万円
SBI証券の制度信用で8月28日にクロス取引すると?
手数料:756円 金利:510万×2.8%÷365=391円
貸株料:510万×1.15%÷365×3日間=482円
逆日歩:2,100円 コスト:1,629円 リターン:約18,880円
優待利回り:0.41% 粗利率:92.79%
日興証券の制度信用で8月28日にクロス取引すると?
手数料:0円 金利:510万×2.5%÷365=349円
貸株料:510万×1.15%÷365×3日間=482円
逆日歩:2,100円 コスト:831円 リターン:約19,670円
優待利回り:0.42% 粗利率:96.32%
解説:逆日歩がつかないと制度クロスの圧勝
あくまでも結果論なのですが、今回の2銘柄については、単純な制度信用のクロスが一般信用に完全勝利する結果になりました。1単元だと誤差レベルですが、単元が大きくなると貸株料のインパクトがあって、一般信用が不利になることがハッキリしますね。
とる造
運否天賦で制度じゃ!と特攻すれば儲けが倍近くじゃったのか・・
【リターン比較】
銘柄 | 株数 | SBI一般 | 日興一般 | SBI制度 | 日興制度 |
クリレス | 100株 | 1,490円 | 1,820円 | 1,740円 | 2,030円 |
1,500株 | 4,440円 | 5,730円 | 8,010円 | 8,780円 | |
リンガー | 100株 | 600円 | 1,540円 | 2,180円 | 2,940円 |
2,000株 | 9,780円 | 11,770円 | 18,880円 | 19,670円 |
結論:一般信用クロスが定着しつつある
各証券会社が一般信用売りに力を入れ始めた
今年は3月といい、令和未曾有の11営業日の4月も無風で通過、6月のすかいらーくは多少波乱があったものの、8月も無風といえるでしょう。
2019年は、手数料無料+豊富な在庫のSMBC日興証券を筆頭として、各証券会社が本気で一般信用売りのサービスの改善、在庫の確保に力を入れている実感があります。そのおかげもあってか、明らかに逆日歩がつきにくくなっています。制度信用でクロス特攻する人が減っているのでしょう。
ほとんど誰も損していない
一般信用組には複雑な気持ちになる現実かもしれません。無駄なコストを割いてしまった気分になりますからね。これも相場でおなじみ「タラレバ」のひとつです。
でも、考えてみると、逆日歩がつかないことって、ほとんどの人が損をしていないんですよね。逆日歩期待の大口貸株主や、信用買いで逆日歩狩りを狙う個人投資家は、少数派だと思われます。
いわば、逆日歩は災害や旅行と同じようなもので、一般信用は保険のようなものです。かけずに済んだ保険を、しまった・・損した、と思うことはそんなにありませんからね。
近年はマネーリテラシーも浸透し、本当の保険を、昭和の時代のように闇雲にかける人は減ったのではないでしょうか?代わりに一般信用のような逆日歩というマネーの災害からで保険をかける人が増えたのが今のように思います。
しかし、トレンドは変化しますし、いずれ市場の価値はアービトラージ(適正価値への収束)されます。制度信用が人気になれば、逆日歩がつく傾向も戻るかもしれませんし。どのような需給に落ち着くのは数年見守る必要があるでしょう。
ギャンブルをしたい人がいて、守りに徹したい人がいて、だから相場が成り立つのです。オプションという商品の買い手と売り手をイメージしてください。異なる投資行動によって、たくさんの売買、トランザクションがあることが、市場の活性化に大切なことだと思います。
とる造
でも、逆日歩がつかなくてションボリしたのは紛れもない事実じゃ・・苦笑 悔しいがまだまだクロスコジキのワシは戦うぞ!
何と戦ってるのやら・・笑
とり子
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